初夜

3/5
前へ
/11ページ
次へ
シャワールームから出てきた翔が、私に冷えたシャンパングラスを渡した。 「今日は記念日だね。」 「……。」 私も早く大人にならなきゃ。翔も本気で言ってる訳じゃないし、割り切らなきゃ。でも翔を見るとね、普段の私じゃなくなっちゃうの。私は、シャンパンを一気に飲み干していた。 「洋子、一緒にバルコニーに出ようか。」 「うん。」 翔は優しく私の手をひいて、私達はバルコニーからビーチに浮かぶ夕焼けを見た。私達どんなふうに見えるのかな?知らない人が見たら、恋人同士に見えるのかしら。 今2人きりで海を見ている。 こんな瞬間を私はずっと待っていたのかもしれない。私の方から、そっと翔と手を繋いだ。 「どうしたの洋子?なんかすごく可愛いよ。」 「だって、翔と恋人同士になると約束したでしょ?撮影の期間だけは。」私は、本気になってしまいそうな気持ちを抑える為に、翔を突き放した。翔は私の手を振り払って、部屋に入ってしまった。 「だって私達は姉弟なのよ。そんな関係にはなれないのよ。」 「うるさい!約束を破るんだね。俺も約束を破るよ!洋子の喜ぶ顔が見たくて引き受けたのに。俺は明日の早朝便で帰国する。今すぐ出ていけ!」
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加