80人が本棚に入れています
本棚に追加
「オガッチ、お疲れさま」
ポンっと背中を叩いてきたのはバイト先の先輩、佐伯さんだった。
「あ。佐伯さんお疲れっす」
笑顔を作ろうとしたがうまくいかない。
「やだ、瀬戸チャンに言われたこと気にしてる?」
瀬戸裕幸。あの人の名前だ。
「いえ。出来なかったのは俺が悪いっす。けどあんな言い方をしなくてもいいじゃないですか!」
「瀬戸チャンは不器用だからねぇ」
佐伯さんが長い髪をフワリと靡かせながら笑った。
「まぁあんまり怒るんじゃないぞ。小川春樹!瀬戸チャンは悪気があってあんな風に言っているんじゃないからね。気にしない気にしない。今日の反省点を次に生かせればオッケーよ。それじゃお疲れ!」
佐伯さんは俺の背中をバンバンとたたきながら手を振り去っていってしまった。
悪気はないって、悪意はたっぷりだと思うけどね。あの言い方は。
はぁ。バイト辞めっかなぁ…
もともとやりたい仕事じゃなかったし。
最初のコメントを投稿しよう!