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「ああ、驚いたよお。それにはね
アンタから引き離せば、奮えるんさ。
さらに離せば、折れん程に暴れ回るんさ」
婆さんはため息、呆れ顔で語る
その目は、私と刀を交互に見ては、興味深げにぎらぎらと輝いていた
「取り落としたら、アンタの下に擦りよるのさな
恋人かえ、と問うてみれば、笑うのさ。
顔もないのにね、分かるんだわさ。」
今度はにまにまとした顔に成り代わり
私には、興味の。刀には優しげな笑みを向けてきた
それがあまりにも不快なので、切り伏してやろうかとも考えたのだが
さすがにそこは、命の恩人に切りかかる事はできなかった
なので私は、切り掛かる代わりに、切り捨てるような目で婆さんを見た。
それに対した婆さんは、おどけたように一歩飛び下がっただけだった
「これはこれは、失礼致したわな
刀が恋人とは滑稽であったか」
言って、私に背を向けた婆さん
私の手元では刀が怒りに打ち震えた。この震えは怒り。そう感じたのだ
自分でも、笑ってしまいそうだが、分かるのだ
「いや、恋人だよ。……大切な」
私がそう呟くと、婆さんはヒッヒと笑い、部屋を出ていってしまった
最後にちょっとした捨て台詞を残して
「せか、では恋人と仲良く寝んさい。あたしゃ出て行く
明日にはアンタも動けるだろうよ」
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