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それを確認したが、つかの間。
サーベルの彼が、素早くも二閃目の横振りをかます。
しかしそれは荒々しく、いかにも適当に振るった、牽制でしか無いと分かった
少しだけ間を取らねば。
半歩だけの間を取り、形成し終えた刀の柄へと右手を添え、左手を鞘に添えて、来たる時を待つ
彼の腕からは、湾曲したサーベルが真っすぐに私の喉元を見ていた
まだだ、一瞬の隙を見逃せば死ぬのは私だ。
落ち着け。来たる時を待て。
そう考える私を、サーベルは急かす。
嫌に輝く銀色が、煌めいて見せながら、私の思考力を奪うのだ
私の命を奪わんとする刃。私の命を守ろうとする刃
目的を達するのがどちらが先か、急いて急いて仕方がない
サーベルの彼が半歩の距離を詰める
その刹那に、サーベル剣先が一瞬だけ揺らいだ
それを待っていたと、私の右腕は風を切るように刀を抜く。
これは、私の勝ちだと確信した時だった。
視界が揺らぎ、私は思わず足を突っ張った
それを逃さないと、私の足先に杭打つサーベルの彼。
私の足を捕らえたサーベルは、私の血で赤い唾液を垂らすように地面を汚した
「神経毒だ。動けまい。」
覗く目が厭らしく歪み、私へと負けを告げた
急いたのは私だったか。
刀を取り落とした私は、振り切れる寸前の神経を右腕だけに集中した
捕まるなら心中をと、取り落とした刀を探そうとしたのだ
しかし、落とした筈の場所には刀は既に無い
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