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さて、どうしてくれようか?
良い考えも浮かばぬまま、私は流される
少女に近づくと、向こうもこちらに気がついたようだ。
目があった刹那、その少女は逃げ出した
これは好都合だ。戻ってくる前に逃げ出すとしよう
共に流れてきた木に別れを告げて
階段に手をかけ、足をかけ。引きずるように階段を登る
水からあがり、水気を吸った衣服が重い。
脱いでしまえばそれまでだが、羞恥心がそれを許さない
人間の道徳とはなんとも面倒臭い
十数段の階段を上りつめた場所で、私は一度へたれた
身を投げ出すように倒れ込み、十数段分の体力の回復を待ったのだ
それくらいに失われた体力。生きている心地どころではない
死体にでもなった気分だ
そんな私の頭上にて、人の気配がする
まずい、戻ってきてしまったのか。
この場は、逃げるとしよう。刀で脅すのも有りだ
一般人なら、刀で驚くに違いない。
重い身体を立ち上げて、私は鞘に手をやる
「……切るぞ。寄るな。」
渇いた喉から発された皺枯れ声
年相応とは言い難い声に、自分でも驚いた
しかし、脅すにはちょうどいいかもしれない
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