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いつのまにか、寝ていたらしい
あんなに寝心地の悪い場所はないだろうに
私はどれだけ疲弊していたのだろうか
目をうっすらと開けてみれば、周りは一面が白で覆われた部屋
医療施設といった所なのだろうが
所々くすんで、汚い黄色になっているのが胡散臭い
「おお、起きなすったか。
えらいケガをしとるだて、驚きんしたわ」
声のする方へ、目をむけてみると皺くちゃの婆さんが私を見ている
その婆さんも部屋と同じように、薄汚れた白衣を着ていた
まったく、衛生も何も考えてないとは
意識さえあれば、こんな所に命を任せたくはなかった
「すまないね、迷惑をかけた……。」
「ああ、嗚呼、動きなするな。
まだ傷が癒えてやせんのだよ」
起き上がろうとした私を、無理矢理に布団へ押し付けて、寝かす
こちらの方が傷に響くのだが、なんとかして頂きたい
私としても傷が痛むのは嫌なのでおとなしく寝転がる
そして、ふと気がついた違和感
「刀は。刀はどこへやった。」
腰にあるべき、無いとおかしな違和感に、私はうろたえた
あの刀は私以外が使えるはずがないのに
私から引き離すことはできないのに
寝転がったまま部屋を見渡したが、刀の影もない
どこへ行ったというのだ
「アンタの腰下、探ってみなせぇ。ほらそこだ。そこにありゃあ」
婆さんの指差す先、私の寝転がった布団の腰下に布団と平行に寝ていた刀
鞘を掴めば、安心でもしたように刀身を震わせた。
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