君海

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海に来ました それだけで 何故か人は不思議な気分になったりするものなのですね 心の地面を掻き回されるような あるいは両の手に抱かれるような 状況によって感じ方も違います 命の起源の場所はやはり特別なのでしょうか だから君も唐突に 「君は」 こんなことを言い出すのでしょうか 「カモメみたいだ」 何故… 「自由で掴み所がなくて、風に吹かれても人に追われても気づかないまま好き勝手にしてるから」 「好き勝手、ね」 君ははしゃいで波打ち際へ行ってしまいました もし僕をカモメとするなら 君は間違いない 空です 君は追っても意味がない とりとめない広がりをもっている どこに向かえば君がいるのかすらわからない 君はまだいいでしょう? 対象が見えている でも「空」なんて人が「頭上」を呼称するためにつけた名前ですから だからきっと彼は好き勝手に飛び回るしかないのです 「じゃあ」 誰かを追うことは、絵を描くことにもひどく似ている… 「あたしの全身で抱き止めるから、飛び込んできてよ。」 砂浜の君とカモメが綺麗に重なって、僕はふいに目眩がするほどの柔らかい衝動を感じました。
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