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結局愛奈は、部屋を片付けないまま寝て、朝になって仕事へ行ってしまった。
僕は愛奈を見送った後、やっぱり彼女の部屋の窓辺にごろんと横たわって外を眺めていた。
にゃにゃ? 外に不審な男…。と思っていたら、千奈が階段を駆け下りて行く音がする。ははぁん。あいつが栄か。お母さんもお父さんもいない時間に来るなんて、僕的にはいけ好かないな。
僕は千奈と栄が部屋に入っていくのを見計って、千奈の部屋に行った。ニャ!! 千奈のやつ、ドアをしっかり閉めてある。
僕は仕方なく愛奈の部屋に戻った。
千奈は愛奈に比べて進んでいる。愛奈は彼氏なんていたことがないんだ。僕は知ってる。愛奈は中学の時好きだった誉という男以外に、ちゃんと恋していない。高校の時も短大の時も、憧れの人話なんかをしたけど、誉の話をしてた時みたいに輝いてないんだ。
誉にも会ったことはないけど、動物が好きで話が合うとか言ってたな。
僕はハッとした。千奈の部屋から、声がしないぞ。やっぱり見に行かないと気が済まなくなって、僕は再び千奈の部屋の前に行った。
「ニャ。ニャァ。」
頼むよ千奈。このドアを開けてくれ。僕は久々にかわいい声で鳴いた。しかし虚しく鳴き声だけが響く。
カリカリカリカリ。今度はドアをかじって呼んだ。それでも応答なし。
あぁお母さん、お父さん。僕はダメな番猫です。がっくりうなだれて、僕はまた愛奈の部屋に入った。
ぼーっとしていると、少しして千奈の部屋のドアが開く。
僕はハッと起き上がって伸びをした。二人の様子を見ようと床に降りてドアの方に向かう。
「んだよ。うぜー猫。つーか汚ねぇ部屋。」
バタン! 突然愛奈の部屋のドアが閉まる。今のが栄か。やっぱりいけ好かないな。
突当たりのトイレに行ったんだろう。初めて見た栄は、よく見えなかったけどムカつく奴だった。猫嫌いなんだな。僕はわかるぞ。
こんちくしょう!! 顔をかじってやるか!! と意気込んだけど、栄に閉められたドアは僕には開けられない。
それから僕は愛奈が帰るまでずっと、彼女の部屋にいた。さすがにトイレを我慢の限界が来て、僕は…してしまった。一応隅っこに気を遣ったんだけど、さすがに怒られるよね…。
僕はしゅんと落ち込んで、愛奈を待った。
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