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「ただいま~。フニャー。フニャ~!」
やっと愛奈が帰ってきた。僕が玄関にいないから、彼女は僕を呼んでいる。僕も鳴いて呼べばいいんだけど、愛奈の部屋におしっことうんちをしちゃったからヘコんでいた。
「あれ。フニャ? あ~! なんでトイレ…」
彼女は部屋に入るなり、僕の排泄物に気付いた。怒られる! 僕は耳を伏せて目をつぶった。
「ごめんね! フニャ。ドア閉まっちゃったんだね。」
愛奈は怒るどころか謝って僕を抱き上げた。そんでナデナデしてくれたんだ。
まなぁ!! 僕は嬉しくてホッとして、彼女の手を舐めた。愛奈はやっぱり優しくて、大好きだ。
愛奈はそれから、せっせと僕の汚した床を拭いた。
「なんで閉まっちゃったのかなぁ…」
そんな疑問を呟いている。僕は栄のムカつく顔を思い出して、猫語で話した。もちろん伝わらないけど。
床がきれいになると、愛奈は僕を抱き上げてベッドに座った。
「フニャ。あのね、あたし今の仕事やっぱり好き。ペット用品仕入れたりするの面白い。犬のことはよくわかんないけど、猫用品の仕入れはフニャのこと考えながらやるんだよ。これあったらフニャ喜ぶかなぁとかね。」
僕は彼女のあぐらの上で、まぁるくなってゴロゴロいった。彼女は話しながら、ずっと僕の頭や背中を撫でてくれている。
「よし! あたしはこれから仕事に生きるぞ!!」
それはちょっと心配な発言ではあったけど、仕事に楽しみが見つかったのは僕も嬉しかった。
愛奈、がんばれ。
やっぱり彼女は、笑っているのがかわいいや。
仕事に生きると言っただけのことはあって、愛奈は本当に充実しているような顔をするようになった。やっぱり変わらないのは、家でのスタイルと汚い部屋。それからぐぅたらの休日。
やれやれ愛奈さん。仕事ほどじゃなくてもいいけど、もう少しオフの生活も積極的になろうよ。
僕は今日もまた、愛奈を玄関で見送ると、彼女の部屋の窓辺に転がった。
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