再会

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すでにアイマスクまではめて寝る準備を整えた上司の、頭にげんこつをお見舞いしようとして、直前でどうにか憎しみを封じ込める。 自分の右手を左手で押さえ込み、口の中で「死ね」と暴言を5回繰り返し、これ以上はないというほどの念をこめて睨み付ける。 全ての感情をため息に変えて一つ吐き出すと、自分がどれほど気を張っていたのかに気づかされる。 『添乗員さん、飲み物はないのかな?さっき入り口の検査で取り上げられたから参ってしまうよ。喉が渇いた。』 一つ前の座席に座っている年配の男性が、唾を飛ばしながら後ろを振り返って注文を付けてきた。 『すみません、離陸したらすぐにアテンダントさんがお配りしてくれると思いますよ?』
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