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『ねぇ、添乗員さん、寒いから毛布貸して。』
毛布・・・そんなのFAに頼んでくれ・・・。心の中で毒づきながらも仮面の笑顔を保つ。
面倒くさいので、自分がまだ未開封だった毛布をビニールごと目の前の客に手渡した。
満足げに戻っていく客の後ろ姿を見ながら、今井は少しの反抗として隣の松浦がかけている毛布をソロリと取ろうとした。
すでに小さく鼾をかいている松浦が気づくはずはないと思ったが、甘かった。
意識はないはずなのに、がっちりと毛布の端をしっかりと
掴んで放さないのだ。
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