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第五話~蘭~猫殺し
「またそれ読んでんの?」
「うん…駄目…?」
「何が楽しいの」
「えー…楽しいよ。沙夜の赤ちゃんできたらどんな名前つけようかなー…とか」
「ふーん…」
私は思い切り馬鹿にした態度で沙夜を見下げた。
いくら足りない沙夜でも私が馬鹿にしてると云う事が良く分かるように。
この馬鹿が最近いつも読んでるのがこの
【赤ちゃん名付け辞典】
こいつが何を読もうと勝手だが、私の目の前でそんな気色悪いものを開かないで欲しい。お願いだから。
「でもね、コレ結構お勉強になるんだよ。天気とか季節にちなんだ名前とか、昔の偉いひとの名前とか、花の名前とかものってるし。あと字画数とか」
私が不機嫌なのを察したのか、ニコニコしながら説明してきた。
…あ、そう。
さっきから教室にいる何人かが私達をチラチラ見ている。
私が良く沙夜を殴るので沙夜が虐められてるんじゃないかとか、脅されて金でも取られてるんじゃないかとか色々思ってるらしい。暇人共が。
「あっそうだ蘭ちゃんさー」
「何」
「この近くでにゃんこが殺されたの知ってた?」
本を鞄に仕舞いながら聞いてきた。
いつもの事ながら話が飛ぶな。
でもその話なら知っていた……と言うより覚えていた。
最初の事件があった頃、良く篠乃さんとその話をしたから。
今よりももっどあの事"で頭が一杯だった私には、何だか魅力的な話題に思えたのだ。
猫の死因が、毒物による物だと聞いていたから、尚更だった。
「可哀想だよね、なんか薬の入ったパンかなんか食べちゃったんでしょ?散歩してたときに」
「それは去年の犬の方。最近のと同じ奴とは限んないよ。あっちこっちで起こってるし。模倣犯かも」
「うん、でもさ、わんこも可哀想だけど飼い主も可哀想だよね、苦しんで死んじゃうとこずっと見てるんだから」
「まぁ何か悪いモン食ったなと思ってもどうしようも出来ないからね」
「うん、だからさそれって可哀想だよね。華夜さんだったら、絶対泣いてる」
また華夜さんか。
沙夜がその名前を出すたび、私は少しうんざりする。
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