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華夜さんはにぼしを銀色のお皿にいれて、猫の前に置いた。
そのまま沙夜の隣にしゃがんで、にぼしにがっつく猫を嬉しそうに見ている。
優しい目だ。
華夜さんは猫が好きなのかな。
「このにゃんこ、飼ってるの?」
「多分、ノラ猫だと思うけど…いろんな所から餌を貰ってるみたい。うちに来るようになったのも、最近なの」
「ふぅーん…。名前、ないのかな?沙夜がつけようか」
「沙夜ちゃん、名前つけるの好きよね」
「そう?」
「金魚にも名前つけたがってたじゃない?」
「だって名前ないとかわいそうだよ」
ほんとは猫の名前も金魚の名前もどうでも良いと思った。
でも華夜さんがそう思っているみたいだから、そういうことにしておく。
居間に行くと、もう二人分のご飯が用意してあった。
今日も手伝えなかった。
ガッカリした。
なるべくお皿の周りを汚さず骨をはがせるように、焼き魚をつついたり裏返したりしていると、ニュースを見ていた華夜さんが思い出したように言った。
「そういえば沙夜ちゃん、昨日の夕刊読んだ?」
「ううん。見てない。なんか書いてあったの?」
「また猫が殺されてたらしいの。うちの近くで」
「またって?」
「去年にも何度かあったの。沙夜ちゃんが来る前に」
「ふぅーん…」
庭を見たら、まださっきの猫がいた。
部屋に上がっては来ないけど、沙夜の手元の魚をじーっと睨んでいる。
図々しい。
「猫殺し…」
声に出して言ってみた。
猫が聞いてるかと思って。
「そう。だから沙夜ちゃんも気をつけてね。田舎にも、変な人はいるのよ」
「うん……」
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