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第四話~沙夜~猫殺し
縁側に座って(いまどき縁側!)庭をぼんやりみていたら、横のほうから猫がソロソロ歩いてきた。
白くて割とおっきい猫だ。手を伸ばしてみると、特に警戒するでもなくこっちに歩いてくる。
頭を撫でようとした手をよけて、足に身体を押しつけるようにすりよってきた。
かわいい。
「沙夜ちゃん、もうご飯食べたら」
「うん……」
華夜さんが優しく呼んでくれた。
まだ制服に着替えただけで、なにも用意してなかった。
呼ばれなかったら多分、何時間でもぼーっと庭を見てたと思う。
時間に無頓着なのはむこうにいた時も引っ越してきてからも変わってないかもしれない。
こんなんだから、蘭ちゃんに愚図だとかトロいとか見てるとイライラするとか言われるんだろうか。
台所のほうからお茶碗のカチャカチャ、という音が聞こえる。
手伝わなきゃ。
立ち上がりかけたついでに、猫のしっぽを掴んでおもいっきり上にひっぱった。
身体がはんぶん浮いた猫は、ギャッとかゆうノドを潰されたような変な声をあげた。
引っ掻かれる前に手を引っ込めて笑っていると、猫は何故か沙夜の後ろをじっと見上げていた。
振り向くと華夜さんが困ったような顔をして立っている。
「イジワルね、沙夜ちゃん」
「遊んでただけだよ」
笑って言ったけど、ちょっと悲しかった。
猫をいじめるイジワルな子だなんて、華夜さんに思われたくない。
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