序章 物語の始まりは

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Vol.1 仲間を集めましょう。 「今日は猪を狩ってきたわよー」 「おや、よくやった!今夜は鍋だね!」 どこで間違ってこんなことになったんだろう…。 目の前で食糧確保に喜ぶ男らしい二人を眺め、おじいさんは一人頭を抱えていた。 “これじゃばぁさんが二人いるみたいじゃ…” 花のように麗しく、慎ましやかな娘にしたいという儚い期待を見事にぶち破り、桃季は非常に男らしく成長した。 今では森の仲間を一通り倒し、食卓に並べることなど彼女にとって朝飯前だ。 これもひとえにおばあさんの教育の賜物である。しかし中身が非常に男前であっても、 桃季は見とれるほど美しい娘に成長していた。 腰まで伸ばした艶やかな黒髪、ふっくらとして桃色に色づいた頬、愛嬌のある大きな瞳。 多少?お転婆ながらもうどこに嫁に出しても恥ずかしくないくらいの娘である。 しかし性格がアレな以上、今更桃季に普通に嫁に行くという未来は望めそうになかった。 「ほらおじいさん!鍋ができたわよ?家の掃除は後でいいから食べましょうよ」 「そうだよ。冷めたら鍋は美味しくないんだよ。掃除しながら変に考え込むのは後におし」 妙に息の合った二人に急かされ、おじいさんは掃除の手を止め、こっそりとため息をついたのだった。
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