序章・雨

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大粒な横殴りの雨が、部屋の窓を叩いていた。 部屋の中は、ゴシック様式の装飾が施され、要所要所に気品が漂う。 ともすれば王宮の一室にもとれるそこは、部屋の主がいかに高い身分の者であるかが伺える。 そこには、二人の人物がいた。 一人は、窓の外を眺める、片眼鏡をかけ、歳相応な白髪混じりの茶髪をした老紳士。 そしてもう一人は、彼の秘書にとれる、タイトなスーツを着た、白い髪を短く纏めた、深紅の瞳の女性。 彼女は手にした紙に書いてある内容を読み上げると、視線をあげて老紳士ヘと目を向ける。 「--報告は以上のようですね」 女性の報告を受け、老紳士はしばし窓の外を眺めると、呟いた。 「生き残ったのは三名だけ、か--」 ギシ-- 老人の掛けた椅子の音が、部屋に響く。 「まさかとは思ったが、相手が【バフォメット】とは」 「……我々は、あといくつの【天使の園】と【ディバイン】を失えばいい」 「ですが、それらは私達に必要なものです……それが無ければ私達はーー」 「分かっておるよ、そんな事はの……だが、今回は血を流しすぎた……代償は余りにも大きい」 「お前も分かっておろう? この歩みは止める訳にはいかぬのだよ、我々は…………ヒトは、このままただ滅び去る訳にはいかないのだ」 「その為に【ルクスエテルナ】があるのだから」 彼は、再び雨の降る窓の外を眺めたのだった。
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