35人が本棚に入れています
本棚に追加
視界に飛び込んで来たのは、数分前まで共に人生を過ごして来た仲間の亡きがら。
それは無造作に、あるいは捨てられたゴミの様に、累々と横たわる。
上空では、死臭を嗅ぎ付けたカラスの群れが、耳障りな鳴き声をあげながら、死神を呼ぶ歌を歌っている。
腕の中には震える少女。
冷たい雫に紛れて、焼ける熱い雫が、抱き留めた腕に時折零れ、腕を伝うにつれて、冷たい雫へと姿を変えていく。
「ねぇ、まだ生きてるよね?ココに居るよね?」
少女は小さく呟くと、母親にあやされる幼子がそうするように、俺の胸に耳を当て、命の音色に聴き入った。
同時に伝わる彼女の音色。
その温もりと心臓の鼓動だけが、俺達が生きている事を証明してくれていた。
最初のコメントを投稿しよう!