序章・雨

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不意に覚醒する意識。 アナログ時計の音が、静かに響く部屋の中。時間は午前2時を回ったあたり。 外では小雨がぱらついている。 「またか----」 雨は嫌いだ……凍てつく滴が、俺を凍り付いたあの記憶へと誘うから。 俺は、これから幾度同じ夢を見るのだろうか? 過去に縛られ、擦り切れるのを待つしかないのだろうか? 隣では、彼女が小さな寝息を立てて眠っている。 うなされてはいない。 その穏やかな寝顔に、俺は安心した。 俺は横になると、目を静かに閉じ、再びまどろみの中へと身を投じる。
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