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澪が6限目の授業を受けていた頃。
彼の母親は夕飯の買い物に出掛けていた。
信号待ちの彼女に目を止めたのは、
悲運にも人間界に降りてきたばかりの悪魔だった。
「あの女の魂、美味そうだな」
ダークグリーンの長髪を後ろで結い、
きちっと袴を着こなす男、もとい悪魔。
やがて信号は青に変わり、
悲劇は起こった。
澪の母親が横断歩道の中頃に差し掛かった時―――
ドンッ!キィィィィィ!
乗用車が突っ込み、はねた。
綺麗な放物線を描いて落下する。
景色がスローモーションで動いて、
周りが騒いでいる。
「 」
遠退く意識の中、発した言葉は声にならず
目の前が真っ暗になった。
「本来なら血肉も戴くところだが…」
まあいい、
呟くと、体を離れる魂を掴み喰らった。
「……ふむ、中々…」
ペロリと舌なめずりをして足元の救急隊を見る。
慌ただしく動き、当に魂のない体を担架に乗せ
救急車は最寄りの病院へ向かった。
「……暇潰し位にはなるかもしれぬ」
深緑の悪魔は嗤い、後を着いていった。
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