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「ねぇ、ルーク!」
「ん?」
「願い、決まったよ」
頬に当たる夜風が気持ちいい。
いつも付けっぱなしの点滴も、
病院特有の消毒液の匂いもしない。
「気持ちいいね、外」
ルークはいいなぁ、翼があって。
お姫様抱っこをされるのも初めてで、
緊張したけど外の心地よさに
そんなもの吹っ飛んでしまった。
「こんな願いでいいなら
いつでも叶えてやるよ」
優の願いは、
「外に出たい。
出来れば、空を飛びたい」
だった。
「ねぇ、ルーク。
私ね、物心ついた時から
ずっと病院にいるの。
だから知らなかった。
こんなに外が気持ちいいんだって事!
ありがと、私の所に来てくれて」
ぎゅ、とルークの胸にしがみついた。
「感謝されるなんて悪魔らしくねぇ…
やっぱり俺は変だな!」
笑い合い、大きな桜の樹の枝に降りた。
「これ、着とけ。寒ぃから」
ジャケットを脱いで肩にかけてやる。
辺りは桜の香りが充満し、
淡いピンクで埋め尽くされていた。
「…本物見たの初めて。綺麗だね」
―死ぬ前に見れて良かった。
ふふっと笑い目を閉じる。
口ずさむのはあの日の鼻歌。
段々と声が小さくなり、
やがてぷつりと途絶えた。
「悪魔の腕の中で
永遠の眠りに就くなんざ、
洒落になんねぇよ…な、優」
クスクス笑うと、
寝息を立てる彼女を起こさない様に
夜空へ飛び立った。
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