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ある日の朝、ベッドで目が覚めると、ひとりしかいないはずの部屋に、ボクのよく知ってる男が立っていたんだ。
『えっ、なんで…、ボクが…』戸惑っているボクを見詰めるもうひとりボク。
『そう。俺はオマエだよ。但し、オマエの影だけどな。』男はそう言ったんだ。
『どういうこと…、』
起きたばかり頭は、目の前で起きている出来事に混乱していた。
そんなボクを尻目に、もうひとりのボクが言ったんだ。
『さあな。俺にも理由は、わからんな。わかっているのは、オマエが身も心にも疲れが溜まっているようだってことだ。それだけじゃなくて、生きる気力が弱っているってことかな。でな、月曜日の今日、仕事にも行きたくないと思っているってことかな。』
『なんで、そ、そんなこと、わかるんだよ。ボクは…』
でも、言葉が続かない。
だって、もうひとりのボクの言う通りなのだ。
『なあ、ものは相談なんだけどな。オマエは相当に疲れているみたいだし、オマエの代わりをしてやってもいいぞ。どうだ。いい話だと思わないか。』
『えっ、代わり、そ、そんなこと、出来るわけないじゃないか。』
『まあ、そんな変な顔をするなよ。
難しく考える必要もないじゃないか。出来ない話じゃない、よく考えてみろ。ご覧とおり見た目だって、オマエその者だし、オマエの昨日までの記憶だって俺は共有しているんだ。やってやれないわけじゃないし、誰も疑われる心配なんてないだ。どうだ。』
『でも、本当に!そんなことが…出来るの?』
『ああ、出来る。乗る気になったみたいだな。じゃあ、始めよう。まずは鏡を持ってこいよ。』
『鏡をって、何に使うの』
『まあ、いいから持ってこいって』
こんな変な状況のなかで、僕は言われるままに引き出しから少し大きめ起き鏡を持ってきたんだ。
『よーし、じゃあ、鏡に自分の姿を映して、映った姿に手を当ててみな。』
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