行間:アキラという男

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俺のアパートには、アキラと名乗る男がいる。 記述は、俺のアパートであっている。 俺の住む、ではなく俺のアパート、と俺が記述したのは、俺がこのアパートの管理人だからだ。 アキラと名乗る男に名字はない。 名字は麦の時もあれば、雛菊、吉川、山茶花、神谷と変動する。 今現在は大神というらしい。 だから、奴の部屋には表札がかかってない。 そもそも、アキラはアパートの住人ではない。 アキラは俺の住む管理棟に住んでいるのだ。 管理棟というのは、3階建てアパートの1階全部屋を指す。 うちのアパートの1階は、夏は暑く冬は寒いという最低最悪の部屋なのだ。 1階部屋が売れないと早くに断定した俺は1階を全て買い占めた。 更に壁を抜いて改築し、エアコンを完備した。 その辺りで両親の残した遺産がなくなりかけたが、俺の経営がそこそこ成功を収め始めたので困らなかった。 そんな折、アキラがふらりと現れた。  
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