7人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
俺のアパートには、アキラと名乗る男がいる。
記述は、俺のアパートであっている。
俺の住む、ではなく俺のアパート、と俺が記述したのは、俺がこのアパートの管理人だからだ。
アキラと名乗る男に名字はない。
名字は麦の時もあれば、雛菊、吉川、山茶花、神谷と変動する。
今現在は大神というらしい。
だから、奴の部屋には表札がかかってない。
そもそも、アキラはアパートの住人ではない。
アキラは俺の住む管理棟に住んでいるのだ。
管理棟というのは、3階建てアパートの1階全部屋を指す。
うちのアパートの1階は、夏は暑く冬は寒いという最低最悪の部屋なのだ。
1階部屋が売れないと早くに断定した俺は1階を全て買い占めた。
更に壁を抜いて改築し、エアコンを完備した。
その辺りで両親の残した遺産がなくなりかけたが、俺の経営がそこそこ成功を収め始めたので困らなかった。
そんな折、アキラがふらりと現れた。
最初のコメントを投稿しよう!