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アキラは悪びれる風もなく、笑顔だ。
「抱かないぞ」
「なんでさ」
「男は抱かない」
「じゃあ俺が抱く」
「バカ」
アキラは俗に言うバイだ。
つまり、男も女も好きになる。
俺は俗に言うゲイだ。
つまり、男しか好きにならない。
だけど、アキラはダメ。
「どうしてさ~。三階堂とは一緒に寝たんだろ?」
「寝てない。あいつに何吹き込まれたんだお前は…」
「気持ちよか」
言い切るまえに殴って黙らせる。
三階堂め…。
本当に奴とは寝てない。
ただ、風邪引いた時に奴が勝手に添い寝して風邪を持って行っただけだ。
「そういうのは三階堂に協力してもらえよ」
「やだよ。あいつ最近彼氏ができたんだもん。俺はそんなに野暮じゃありまセン」
三階堂に彼氏ができたことなら俺も知っている。
そのうち詳しく聞くとしよう。
「もう書けそうなんだろ。だったらパソコンの前行けよ」
「つれないなぁ」
「仕事仕事」
そういって俺は腰をあげた。
アキラの言ってることはただの冗談だ。
アキラも俺も、そんなこと解っている。
俺たちは相性悪すぎるんだから。
そうじゃなきゃ今まで2年も同居できるはずがない。
相性が良いなら、俺たちはとっくに喧嘩してるだろう。
喧嘩はするほど仲が良いらしいからな。
「確かに。俺もそー思う」
後に続いて部屋を出るアキラも同意した。
どうせ、これからも俺たちは一緒に暮らす。
奴は相変わらずこんな感じだろうし、俺には新しいなにかがあるかもしれない。
「先の事なんて解んないから生きてるんじゃん。俺、未来が見えるようになったら生き延びるためになんでもしちゃうもん。
解んないから、死なないように一所懸命だよ」
「………はいはい」
後ろ手に扉をしめる。
後にはクーラーの効果がまだ残った、冷たい部屋だけ取り残された。
fin.
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