3と2のつく教室

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間違ってる。 「やべえ格好いいわ」 「やっぱノックアウト見なきゃK-1じゃねえよ!」 「ん~? ミツ、黒板に何書いてんだ?」 「見ろ、昨日のジヤルガ対熊井戦。 開始18分ノックアウトの瞬間だぜ!」 だから、間違ってるのに。 ノックアウトの綴りが。 この場合、話しかけたら余計なお世話なのかな。 ここ数日で僕はとある変わった友達ができたのだけど、だからといって僕の世界はまだまだ小さい。 僕は自分で自覚している程小心者だったりするから。 自覚症状があるだけ厄介だ。 親だの、大人だの、じいさんだのなら付き合える。 大人と話しているのは気が楽だ。 でも、気になっちゃうのは僕の悪いクセだ。 「ねえ」 名前もまだ覚えきれてないクラスメートは、突然話しかけた僕をきょとんとした顔で見る。 「ノックアウトって、最初Kで始まるんだよね?」 黒板を、正しくは黒板の白い文字を指差した。 「あ?」 あ、怖い顔。 ヤンキーだ。 偏見? 「ん? あ~、そうだっけ? 俺、英語ダメなんだよ。サンキュー、委員長」 どうやら僕は偏見もちだったみたいだ。 委員長というあだ名はどもかく、ヤンキー君は僕の指摘した通りノックアウトの最初にKを付け加えた。 担任の言っていた世界が広がるって、こういうことかな。 ちょっと嬉しかったり。  
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