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特別な人物は、ただただ馬の上から振り落とされることのないように、巧く衝撃を逃がし、バランスを取るのが精一杯だった。
いつも温厚な愛馬がこのような状態になり、少なからず彼は動揺していた。
そんな主の動揺なんて気にも止めずに馬は駆けることをやめない。
馬上の人は飛び降りるかどうか悩んでいた。
このままだと馬は木にぶつかるか、裂けた谷間に落ちるかしてしまうだろう。
止める術はない。
飛び降りてもこの速さだ、無事ではすまないだろう。
ならば、愛馬と共に木にぶつかり止まるほうがまだマシだ。
どこかわからぬとこで愛馬が傷つき行き倒れてしまう可能性に比べればずっといい。
自分は恐らく付きのもの達が捜し出してくれるだろう。
考えをまとめ覚悟を決めたように彼はギリっと歯を噛み締めた。
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