18人が本棚に入れています
本棚に追加
「おーい。ダイ。待てよ。」
ダイというのは俺こと、工藤 大助(くどう だいすけ)のことである。
今は至って普通の登校中である。
「待てって、そんなにさっさと歩いたらおいつかねぇだろ。」
と言いながら俺の肩をつかむ。
追いついてんじゃん。
「おぉ。淳。おはよ。」
淳というのは俺のとも…じゃなく、幼なじみでただの腐れ縁だ。
あからさまに気づいてなかったふりをする。
「おぉ…って、今気づいたのかよ。まっ。別にいいけど。」
細かいことは気にしない奴なんだ。
「それより今日からもう高二だな。」
淳はきっと何気なく呟いたのだと思う。
俺もぼんやり今までを少し思い返す。
特別優れた能力があった訳でもなく、モテた記憶もない。
まぁそれが運命ってやつだから仕方ない。
だから思い返しても意味がない。
例え俺が過去に戻ってもまた同じ結果になるんだと思う。
だって…運命だし。
「知ってる。」
素っ気なく答える。
「早いよなぁ~。こんな感じであっと言う間にオッサンになるのかねぇ~。」
未来のことなんてわからない。
でもそんな俺の知らない未来は…今まで俺が生きてきたみたいに…つまり『この学校に入学した』といったイベントがあったように…もうどんなイベントがあるか決まっている。
「そんな話は、いまは止めろよ。」
俺はあからさま不機嫌な顔で言い放つ。
「え?何?お前青春に浸ってんの?」
ニヤニヤと笑う淳。
「……………」
まったく、こういうウザイこと言わないなら良い奴なんだが…。
だから俺は淳を睨みつけてから先を急ぐ。
急いだからといって何かが変わる訳でもない。
おそらくここで俺が急ぐってことは大昔から決まってたんだ。
そうに違いない。
そんなくだらないことを考えてしまう。
もしかしてこんな風に考えるということも…。
多分これからさきも、運命という決まったレールの上を進んでいくのだろう。
…そして。
決められた通りに…消えてくんだ…。
最初のコメントを投稿しよう!