序章 出会いの必然性

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その予兆が見えだしたのは朝のホームルームだ。 勘の良い人は気づいただろう。 これから起こることが。 見覚えの無い少女…ぶつかる…ホームルーム…そして『ある出来事』でラブコメ成立だよな。 「みんな席付け。実は今日転校生が来てる。入ってくれ。」 転校生って言葉でもうわかっただろ? 俺は見覚えのある転校生を見て呆然とする。 何故転校生なのに見覚えがあるんだよ…。 「転校生の今倉雛多(いまくら ひなた)さんだ。」 「よろしく。」 もちろん朝ぶつかった彼女が平然と担任の横に立つ。 その顔やこれから起こりそうな嫌な予感に軽く戦慄する。 「席はあそこだ。」 担任の指す方向を目で追う。 結果…俺の隣。 先生。それは僕にとって死刑判決です。 仔羊を狼と並べるようなものだぞ。 こうして『転校してきて何故か隣の席』というイベントが起こったせいでラブコメが成立してしまう。 しかもこのままじゃ死亡フラグまっしぐらだ。 「よろしく。大助君。」 何となく作り笑いじゃないような明るい笑顔。 でもその笑顔が逆に怖い。 「…よ、よろしく。」 ビビりながらも引きつった笑顔を返す。 これも運命なのかな…。 俺は今日一日中隣がある意味気になり、集中できないまま一日を終えた。 まぁ言い換えると隣を警戒していたわけだ。 結局なにも無かったんだけど…。 気が気でない一日がとっても無駄に感じる。 目だけは離さなかった。 目…だけはね。 .
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