第三章 大の字

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そして屋上に行く前にふとあるクラスの前で雛多は立ち止まった。 「一与を呼んでくるからちょっと待ってて。」 そう言って西牧さんのクラスに入っていく。 教室にまだ他の生徒が残っているにも関わらず、特に怖じ気づく素振りすら見せずにスタスタと…。 「雛多さんって行動力ありますよね。そして何よりその行動にぶれが無いんですよね…。私だったら他のクラスに入っていくだけでも一苦労です。」 そう言って坂本さんは恥ずかしそうに笑った。 それは実に恥ずかしがり屋でシャイな女の子って感じ丸出しだった。 雛多にも坂本さんの謙虚さを少し…いや、たくさん分けてあげたいよ。 「雛多の場合はありすぎのような気もするがな。」 俺の感想は本当にただ思ったことを述べただけだ。 「でも私もあれくらい欲しかったです。」 あんなに!? 止めといった方がいいと思うよ。 そもそももしクラスに雛多並の活動力があるやつが二人もいたら混沌としそうだが…。 しかし坂本さんの真剣な目を見ていると言葉には出せなかった。 その目は本気で欲しがっているようで、何か強い意志を感じた。 本当…純粋だなって思う。 「いつか…きっと…。」 そう言って坂本さんは小さく笑った。 それは黄昏色に染まった廊下での出来事だった…。 .
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