第四章 婉曲な気持ち

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暫く歩くと雛多の住むマンションに着いた。 何度見ても大きくて、迫力があり、格の違いを感じる建物である。 そしてそんなマンションを見たみんなの第一声が… …………… ………出ない。 「おほん。みんなぼーっとしてどうしたんだよ。」 俺はわざとらしく咳をした。 「あ、いや、その、想像以上の大きさと綺麗さ…。何よりこの高級感におされて…。」 「…はいはい。その気持ちは十分にわかります。」 まだ外見しか見てないのにな…。 そしてマンションの入り口で雛多の部屋のインターホンをならす。 「はい。」 「あ、オレオレ。」 「ん?オレオレ詐欺か?」 「インターホンでか?」 「世の中何が起こるかわからないからな。」 「お宅の親が窃盗事件を起こしたので五十万ほど必要です。」 少し悪ノリする俺。 「そのまま刑務所にでも入れといてくれ。」 冗談が過ぎる雛多。 「…薄情なやつ。」 「薄幸なやつには言われたくないね。」 ケラケラとインターホン越しで笑う雛多。 もし俺の人生が薄幸だと言うのなら原因の半分はお前かもしれん。 まぁ…これが運命ってやつなんだろうがね。 変なやりとりで少し手間取ったがマンションの自動ドアが開く。 そしてエレベーターの方に向かった。 このマンション一階一階が長いからエレベーターじゃないときついよな…っと、一人で別の事を考えていた。 .
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