Last office・私の花道

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  「和歌ちゃん、君には本当に世話になったね。ありがとう。ちゃんとお礼を言いたかったんだ」 「そんな。私は何もしていません」 「いいや、君のお陰だよ」三輪さんは微笑んで話し始めた。「あの限定デートの後、桃香と色々話し合ったんだ。桃香が僕に冷たくしていたのは、政略結婚なんかもう時代遅れだし、何時か離婚を切り出されると思っていたから、すぐに離婚(わか)れられるように、僕の事を好きになったりしないようにしていたんだと聞かされたよ。でも、彼女は・・・・そんな僕をずっと想ってくれていたんだ。僕が仕方なく結婚し、心に秘めた人がいると見抜いていて、それで冷たい態度を取るしか出来なかったって、泣いて言われた時、気が付いたんだ。僕がもっとちゃんと、桃香と向き合うべきだったのに、彼女をずっと傷つけていたんだと反省したよ」 「・・・・じゃあ、今は・・・・?」 「大丈夫だよ。心配ない。これからはしっかり、桃香を大切にしていこうと思っている。今まで出来なかった分を、取り戻すためにも」 「そうですか。それは良かったです!」  三輪さんと桃香さんが、仲良く夫婦であり続けられるなら、これ以上に嬉しい事は無い。 「和歌ちゃんのお陰だよ。本当にありがとう」  頭を下げられた。
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