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「来ないでっ」
「イヤです」
あっという間に詰め寄られた。抱き寄せられ、口づけされる。
私を狂わせる、ジョーマローンの香り。いつの間にか、好きになってしまった香り。
魅惑の、香り。
「離してよっ」
何とか真吾君を押しのけた。このままなし崩しなんて、絶対にイヤ!!
「和歌子さん、聞いて下さい。俺、貴女以外の女と結婚するつもりありませんよ。捨てるなんてとんでもないです。ほら、これ見てください。中見て欲しいから、もう勝手に出しますね」
真吾君は目の前に差し出した包み紙を破り捨て、中から現れた小箱の中身を見せた。
見る角度によって不思議な光を放つ、美しい宝石がはめ込まれた、綺麗な指輪が中で光っている。高そうなダイヤの指輪だった。
年下の普通のサラリーマンの給料じゃ、到底買えなさそうな高い指輪だろうと思われる。
「和歌子さん、俺と結婚してください」
「・・・・け・・・・っこん?」
「そうです。結婚。寿退社憧れていらっしゃいましたよね?」
笑顔の真吾君に、私の怒りは頂点に達した。
「ふざけんな! 誰がアンタみたいな御曹司と結婚なんかするもんですかっ!!」
こんな場面で勝手にプロポーズしやがって!
まだ話終わってないっつーのに!!
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