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「い、いや先越されてしまったというか、裂いて壊れてしまったというか、うん」
なんとなく気になる。ひっかる感じ。ひっかかってそれでどこかでずれてしまってる感じ。
馬飼は話したくなさそうだが、ここはさらに突っ込んでみる時なのだろう。
問い詰めてみる。
「あ、あのな……お前ってさあ、……すでに他の人間とさ、付き合ってたりするじゃん。それで、俺が……も悔しくって、頑張らなきゃって、な?」
馬飼はそう言い終えると、冷水を飲もうとコップに口を近づける。
しかし、既にコップは空で、複雑な顔のまま、それを元の位置にもどす。
「……うん、なるほどな」一度軽く頷く。「そうか、悔しいのか。自分と先輩の交際が悔しいのか。負けたくないのか」
馬飼は「ああ、そうだ」と返す。
一方、こちらは「ああ、そうか」と返す。
そして、もう一度心の中で、一連の流れにより生まれた言葉の数々を、反復して考える。
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