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「おま……何だよ急に」
両手を掴んで離させ、とりあえず奏を押さえる。
「何だよって、診察だよ?ほらほら、首が痛いんでしょ?」
悪びれる様子もなく、満面の笑みを浮かべる奏に、俺は溜め息を漏らさずにはいられなかった。
胸元が少し開いたナース服は、奏の抜群のスタイルをよく露にしていて、男性には喜ばしい服装ではあるのだろうが、今この場でその格好は止めてほしい。
「それに……昨日は瑠那と寝てたらしいじゃない?」
少し低くなった口調の言葉を耳にした俺は動きを止める。
「何で瑠那と?」
目が俺の深層心理を覗き込むような恐ろしい目をしていて、言葉が喉につっかかる感覚がした。
「何でって……瑠那が夜は真っ暗な中では1人じゃ寝れないって言ってきて……」
その問い詰めるような奏の目に負けて思わず言ってしまった。
しかしこの状況を作ったのは他でもない瑠那なのだから、これくらいは許してもらいたい。
「ふーん……怖がってる女の子とだったら誰とでも寝るんだ?同じベッドで」
相変わらずいつもと違う声色でのその言葉は、俺にとって尋問以外の何物でもない。
「い、いや、そういうわけじゃ……」
「だったら私とも寝てよ!!」
叫ぶと同時に俺を強引に押し倒し、見下すように俺を見る。
いつもの奏ではない事が明確になった瞬間だった。
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