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「悠介!!朝だよ!!起っきろー!!」
喧しい声と共に、俺を覆っていた温かみのある掛布団が引き剥がされる。
4月でも朝はやっぱり寒い。
「莉緒……掛布団は温かいけど莉緒は冷たいんだな」
拳が俺の腹にめり込む。
睡魔は消滅したが、代わりに素晴らしき激痛をいただいた。
「悠介が起きないのが悪い!!もう飯出来てるよ!!」
妹の瀬戸口 莉緒(セトグチ リオ)は腕を組んで踏ん反り返る。
しぶしぶベットから降りて、目を擦りながら溜め息を吐く。
「溜め息なんか吐いてないで早く下来なよ!!全く……ダラダラした兄を持つと苦労するよ」
中学校の制服に身を包む莉緒は、やれやれと首を横に振りながら俺の部屋を出ていった。
時計を見て時間に余裕がある事を確認し、真新しい高校の制服に袖を通す。
新品独特の臭いが目の覚めていない俺の鼻に障り、何だか少しテンションが下がる。
俺はいよいよ高校へ入学し、莉緒は中学3年生へと進級する。
これまた真新しいスクバを持って、重い足取りで階段を降りた。
その先に広がるリビングには、すでに母さんと莉緒がテーブルで朝食を食べ始めていた。
「おはよう悠介。また莉緒に叩き起こされたのね。今日から高校生なんだからもう少ししっかりしなさい」
コーヒーをすすりながら、冷ややかな視線を送ってくる母さんを尻目に、俺は無言でイスに腰を下ろした。
↓樂都様より、悠介
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