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コチ……コチ……
と、壁に掛けてある時計の秒針の音だけが響く。
薄暗く、怪しげな雰囲気漂う静かな部屋の中で私は座っている。
椅子に深くもたれかけ、いつもと変わらない景色を見る。
分厚いカーテンから若干日が差し込んでいる窓、意味の分からない本や骨董品を入れた棚。
私はこの占い部屋として使っているアパートの一室が好きだった。
今日は、占い師としての仕事を止め、このこの部屋でのんびりと過ごしたいと思っていたのだが、昨日電話で予約が入ったので、今、目の前にいる少年を仕方なく占うことになった。
「……あ、あの、昨日お電話した小安です。
よ、よろしくお願いします……」
ぺこりとお辞儀をし、消え入りそうな声で名乗った少年を見る。
小安高弘。中学生二年生。
今日唯一の客である。
無造作にくりんとした髪の毛に、潤んだ瞳から子供っぽさが感じられ、中学生らしい学ランを着ているが、まだ学ランに着られているといった感じだ。
その高くはない身長も子供っぽさに拍車をかけている。
「……き、今日は占ってほしいことがあったのできたのですが」
いつも思うのだが、占ってほしいことが無い人が、こんなところに来るはずがない。何故、占ってもらう人はこのように、話を始めるのだろうか。
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