序章─独り─・前編

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「最近ち、ちょっと──」 私はスッと手を出し、この客──小安が言おうとするのを遮る。 「言わなくてもわかるんで別にいいです」 「わかるって……」 小安も普通の客と同じような、疑問に満ちた微妙な顔をする。 まあ、当たり前だが。 「これからあなたの占ってほしいことを正確に知るため『心』を覗かせてもらいます。 なので言う必要はありません。 しかし、心を覗くということは、あなたの人生や考えを、ある程度見させていただくことになりますが、よろしいですか?」 「……はあ、別に構いませんが」 バレないように勝手に心を読むことも可能と言えば可能なのだが、泥棒みたいな感じがして不快なので、一応了承を得ておく。
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