29人が本棚に入れています
本棚に追加
「何だよ、間抜けな顔しやがって馬鹿にしてんのか?」
「馬鹿になんかしてないよ、君を尊敬すらしてる。僕には恋愛ってのが経験不足であまりよくわからないからね」
卑下と皮肉を交えつつ、僕は店員を呼び出す為のボタンを押した。
ポチッ、とな。
ついつい言いたくなる気持ちは、なんとかして抑えてみる。
「とりあえず、飲み物頼んでいいかな?」
「いちいち遠慮すんなよ」
まぁダメだと言われても呼び出した以上、何かしら頼むんだが。
店員が来たので、アイスコーヒーを頼む。
ボタンを押して直ぐ様来たところからすると、タイミングを待っていたようだ。
客の会話からタイミングを計ろうとする姿勢はサービス業として誉めるべきか、文句の一つでも言ってやるべきか。
「それで、何で別れる事になったんだい? 確かもう5年は付き合っていただろう」
「ああ、そう言われれば5年だな」
彼は納得したかのように、一人頷いた。
いや、質問に答えろよ。
勝手に納得してんじゃねぇよ。
「まぁそうだな、5年も経ったから別れる事になっちまったんだろうな」
彼はまたコーヒーを口にした。
表情が少し悲しみを帯びている様に見てとれた。
最初のコメントを投稿しよう!