卒業

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「何だよ、間抜けな顔しやがって馬鹿にしてんのか?」 「馬鹿になんかしてないよ、君を尊敬すらしてる。僕には恋愛ってのが経験不足であまりよくわからないからね」  卑下と皮肉を交えつつ、僕は店員を呼び出す為のボタンを押した。  ポチッ、とな。  ついつい言いたくなる気持ちは、なんとかして抑えてみる。 「とりあえず、飲み物頼んでいいかな?」 「いちいち遠慮すんなよ」  まぁダメだと言われても呼び出した以上、何かしら頼むんだが。  店員が来たので、アイスコーヒーを頼む。  ボタンを押して直ぐ様来たところからすると、タイミングを待っていたようだ。  客の会話からタイミングを計ろうとする姿勢はサービス業として誉めるべきか、文句の一つでも言ってやるべきか。 「それで、何で別れる事になったんだい? 確かもう5年は付き合っていただろう」 「ああ、そう言われれば5年だな」  彼は納得したかのように、一人頷いた。  いや、質問に答えろよ。  勝手に納得してんじゃねぇよ。 「まぁそうだな、5年も経ったから別れる事になっちまったんだろうな」  彼はまたコーヒーを口にした。  表情が少し悲しみを帯びている様に見てとれた。
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