…二…

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飛鳥山を正面に、左手の方向に向かって歩を進めると、すぐにホーム端にある降り階段が確認できる。 サクラは、はやる気持ちを抑えつつ階段を降り、自動改札を抜けると、いきなり壁だ。 その前に、通路と呼ぶのも憚られそうな、ささやかなスペースがある。 迷う事なく右に! 眼の前には金網。 その向こうを銀のボディに空色ラインの列車が、減速しつつ抜けていく。 線路沿いの小道に出たら 左に古びた金属製の階段が見える。 線路またいで架かる陸橋に繋がる階段だ。 階段を昇りきったら、そこが陸橋の入口だ。 このかなりくたびれた陸橋。 距離にして30メートル程を渡りきると、そこが 『飛鳥山』の『中腹』である。 そう『飛鳥山』は、それほど高い山ではない。 せいぜい三、四階建ての建物くらい。 高さだけなら、感覚的には山と言うより高台だ。 もっとも、何メートル以上あれば『山』なのかは知らないが、、。 陸橋を渡りきると石垣に突き当たり、道は左右に分かれる。 左は、距離は短いが、割と急な階段。 視線を右に転じると、ごく緩やかな降り勾配の細い道。 悩み所だ。 一気に階段を駆け登り頂上に到達したい誘惑は抑えがたい。 しかし小道の方も気になる。 もう一度、左右を見比べる。 「ん!?」 小道への入口。 その中央に車止めだろうか? 角材が一本。 そこにはなにやら刻み込まれた黒いプレート。 近付いてよく見ると桜と道を組み合わせたデザインの左脇に文字がある。 『飛鳥の小径』 魅惑的で好奇心をくすぐる響きだ。 もはや迷いはない。 楽しい予感には逆らえない! 「決めたっ!」 サクラは『飛鳥の小径』 へと、踏み出した。
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