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壱
シャラン
シャラン
誰も寄り付かない狂い桜の前で鈴を鳴らし
風に誘われるままに舞う美しい緋色の着物を纏った女。
名を桜華<オウカ>と言う。
人は彼女を桜の姫、またの名を狂い咲き姫と呼ぶ。
彼女は人でも妖でもない。
狂い桜から埋まれた桜の姫。
いずれ死に桜を赤く染める為の血を捧げる為だけに産み出された悲しき存在。
彼女は夜毎悲しき自分の運命を紛らわせる為に一人舞う。
そんな姫は今宵も一人で舞っていた。
誰も寄り付かないはずの森、それなのに生き物の気配が一つ。
舞はピタリと止み視線はそちらへ注がれる。
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