さよなら、心の欠片

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いつだって君は、人のことばかりだから。 今回の大きな決断だって、心にほんの少しの迷いさえあれば、攫って行ってしまおうと思ったんだ。 君がどんなに泣き叫ぼうと、どんなに嫌われようと、攫ってしまおうと思っていたんだ。 カガリが国の為に結婚を決め、今日、結婚式が行われる。 ほんの少しの時間だけ二人きりで話しをすることが出来た。 多分、…最後の。 「…カガリ」 名前を呼ぶ声が、少し震えている。 そんな声に純白のドレスに身を包んだカガリは真っ直ぐな瞳で、アスランを見据える。 「結婚…おめで、とう」 ずっと言えなかった言葉。言いたくなかった言葉。 そんな言葉に、カガリの瞳は少しだけ揺れた。 でも、そんなのは一瞬ですぐに柔らかく微笑み、 「ありがとう」 そう言える強さを、ちゃんと持っているんだ。 「アスラン…私、幸せになるよ。…必ず。だから…」 「わかってる。カガリ。愛してる。でも、俺も、君じゃない誰かと…幸せになるよ。きっと」 正直涙が出そうだ。 自分は、ちゃんと笑えているのだろうか。どっちにしろ、まだ言わなくてはいけないことがある。一番…大切なこと。 「…その為に、本心はここに…おいていくよ」 本当は君を誰かになんて、渡したくない。 愛してる。 誰よりも愛してる。 カガリの顔が、少し切なげに歪んだ気がした。 刹那、部屋に響くノックと声。 「カガリ様、お時間です」 「あぁ、…わかった」 ちょっとした、最後の支度をするカガリ。 それが終わると、ゆっくりこちらを見た。 「…幸せになって、アスラン。それから…」 「     」 音はなかった。でも、口の動きで、何を言っているのかははっきりわかって。 「私も…本心はここにおいていく」 お互いの気持ちを、突き通せる、そんな、優しい世界で生きられたら良かったのに。 アイシテル 同じ気持ちは、一雫、零れ落ちて、この場所に残った。 さよなら、何よりも大切だった、愛しい心の欠片。 -fin-
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