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「…環ちゃん。…もし…もし、何か身に危険を感じたり、不審な事があったりしたら…すぐに教えてね」
「…やっぱり…何かあったんですか?」
穏やかではない“もしも”の話に、環の心はざわざわと揺れた。
環の問いに、少しの沈黙の後、佐和子は笑って答えた。
「…ないわ、何も。この先、もしもの話。私も、隼人だって…環ちゃんが助けを求めた時には、すぐに駆けつけるから。私はいつでも環ちゃんの味方よ、ってそういう話」
佐和子はそう言ったものの、環はやはり何かあったんだと悟ると、それ以上追求することはしなかった。
佐和子の張り詰めた緊張を感じ取ることができたから。
守ろうとしてくれていることが、伝わってきたから。
…だからそれ以上を無理に聞き出して知ろうなんて、思わなかった。
「…あぁ、ごめんなさい、長々と喋りすぎちゃった。そろそろ仕事に戻るわね」
「…あ、はい。わざわざ、お電話ありがとうございました」
「お礼を言わなきゃならないのは私の方。ありがとう、環ちゃん」
お礼を言われた意味をちゃんと理解できないまま電話を終えると、どっと疲れが押し寄せ、環はソファに身を委ね、目を閉じた。
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