電話

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電話

 はろー、はろー、この声君に届いていますか?  先月、もっとも俺の携帯の利用料金をしめたのは君への電話代だった。  そもそも君は周りを見なさすぎる。いつでもあれだけを見続けていて。  少しは俺をチラリとでもいいから見たらどうなんだい?  あんな奴ばっかり追ってないで、俺のとこへ来ればいいんだ。ほら、どうせまた泣いてるんだろ?  辛いなら、泣くならいっそ俺の胸で。 「もうずっと好きでいるのも嫌になっちゃって」  そう言って電話越しに鼻をすする君は、どうせあいつからもらった人形でも抱きしめているんだろう。  俺のあげた物はみーんな飾るだけなのに。  どんなになだめたって、結局君は辛いって言い続けるだけで。  どうやらこの電話は君の声を俺へ届けることしかしていないみたいだ。  物の癖に仕事をさぼるなんて。 「だったらさ」  いっそ俺を好きになっちまえよ。あんな奴のことなんか忘れちまえよ。  あいつはもう、俺とのお前の取り合いには参加してねーんだよ。  俺のライバルからは辞退したんだからさ。  悪いけど君のことなんかこれっぽっちも見ていやしない。本当は気づいてるんだろ? だから辛いんだろ?  結局言葉は最後まで続くはずはないんだ「だったらさ」で切れたさ。だって俺基本的には保守派だもん。  君は泣く。電話越しに。  俺は戦う。戦うつもりのない奴と。  いつか、いつか君の奴への気持ちが薄れますように。  その隙に俺がうまくつけこめますように。 そして、この電話が俺の声を届けてくれるようになりますように。
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