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『そっか…』
ふっと、私の口元から微かな笑みがこぼれました。
『じゃあ、子供を堕ろして結婚の話も白紙に戻して、また1から再スタートしたいってこと?』
『…そういうことになるかな』
『…私達、これからうまくやっていけると思う?』
そう、問い掛けた私に対して、彼は少し考えたあと、こう言いました。
『失った信用を取り戻すのは難しいかもしれないけど…時間をかけて修復して…また今までみたいに付き合っていければって…そう思う』
『…ふーん…』
【失った信用】
それは…
彼のものなのか、私のものなのか、はたまたお互いのものなのか。
『でも、よく分かったよ。なにを思ってなにを望んでいるのか…自分の気持ち、ちゃんと話してくれてありがとうね』
私はゆっくりと、笑顔で彼にお礼を言いました。
彼の思っていること、考えていること。
望んでいること、叶えたいこと。
そして、恐れていることも…
『…うん、じゃあ、分かった』
私は笑顔のまま、さらに続けました。
『…分かったって?…詩子、それじゃあ…』
期待の灯る彼の表情。
『…うん』
私はニッコリ、力強く頷きました。
そして…
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