異空間

3/8
37人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
ビー。 想像とピッタリの、壊れかけのような古いブザーの音に 緊張していた綾の心は、フッと軽くなる。 やがて、ゴソゴソと奥から音が聞こえて 「はい」 扉の向こうで聞こえてきたのは 寝ぼけたような男の声だった。 「あのっ。 面接のお願いをしていた、山口と申します」 暫しの沈黙…。 「あ…。 ちょ、ちょっと待っててください」 バタバタと奥に戻る足音。 (あれ? 私、時間間違えたかな…) 携帯を開き、時間を確認する。 時間はピッタリだ。 待たされている間、綾の目は、古びた民家を観察していた。 昔は真っ白だったであろう木の壁は、所々ベージュに色を替え 昔はさぞかし、モダンな造りだった事が窺えた。 ドアの横には、丸い外灯がさらにレトロな雰囲気をかもし出している。 屋根は、三角屋根のモスグリーンで 庭の木々たちとマッチしていた。 5分くらい待たされただろうか。 また奥から、バタバタと足音が聞こえ 建付けが悪いのか、鈍い音をたてて引き戸が開く。 綾は、背筋をピンと伸ばし その扉が開くのを待った。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!