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ビー。
想像とピッタリの、壊れかけのような古いブザーの音に
緊張していた綾の心は、フッと軽くなる。
やがて、ゴソゴソと奥から音が聞こえて
「はい」
扉の向こうで聞こえてきたのは
寝ぼけたような男の声だった。
「あのっ。
面接のお願いをしていた、山口と申します」
暫しの沈黙…。
「あ…。
ちょ、ちょっと待っててください」
バタバタと奥に戻る足音。
(あれ?
私、時間間違えたかな…)
携帯を開き、時間を確認する。
時間はピッタリだ。
待たされている間、綾の目は、古びた民家を観察していた。
昔は真っ白だったであろう木の壁は、所々ベージュに色を替え
昔はさぞかし、モダンな造りだった事が窺えた。
ドアの横には、丸い外灯がさらにレトロな雰囲気をかもし出している。
屋根は、三角屋根のモスグリーンで
庭の木々たちとマッチしていた。
5分くらい待たされただろうか。
また奥から、バタバタと足音が聞こえ
建付けが悪いのか、鈍い音をたてて引き戸が開く。
綾は、背筋をピンと伸ばし
その扉が開くのを待った。
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