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「いや~、スイマセン。
すっかり忘れてて」
いかにも寝起きな男が、扉の向こうから現れる。
「「あ!」」
声を出したのは同時だった。
現れたのは、デザイン学校で同級生だった茂木隆だった。
茂木は、学校でも成績優秀な男で
整った顔をしているのに
いつも服装はヨレヨレで
常に、一人でパソコンに向かっているような人だった。
勉強熱心で努力家。
だが、個性的で無口の茂木と
恋愛にかまけて、遊び歩いている綾との接点は殆どなく
二度三度、言葉を交わした事があるだけだった。
「えっと、山口、さんだよね?」
そんな彼が、自分の名前を覚えていてくれた事に、驚きを覚えながら
綾は小さく会釈をした。
「久しぶり…です。
ここ、茂木君の事務所だったんだ」
久しぶりに見る茂木は
合いも変わらずヨレヨレで
寝ていたであろう頭には、バッチリ寝癖までついている。
「変わらないね」
綾は、懐かしくなって思わず微笑む。
「いやいや。
昨日徹夜しちゃって、面接もすっかり忘れてたんだよ。
ごめんね。
どうぞ、入って」
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