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「社長なんて素晴らしいモンじゃないよ。
一人でやってる事務所だから」
茂木は目尻を下げて笑う。
「まだまだ駆け出しだし、小さな仕事しかしてなかったんだけど
やっと少しだけ軌道に乗ったから」
まともに行ってなかった学校の同級生とは、殆ど連絡も取っていなかったけれど
卒業して、そのままデザインの仕事している人は、一部だと聞いた。
皆、挫折をしたり
結婚をしたり
現実の厳しさに捕まってやめてしまった人が、8割を占めるらしい。
そんな中で茂木は、変わらずに、真っ直ぐガムシャラに歩んできたのだろう。
その顔は自信に満ち溢れ
綾はまた自分が恥ずかしくなった。
「この時代でしょ。
給料もそんなに払えないし、仕事は雑用ばかりだし
なかなか人がこなくてね」
茂木は笑う。
「だからデザインの仕事って言っても難しい事は殆どないんだ。
でも…」
茂木は急に真面目な顔をして続ける。
「でも、仕事として僕は厳しいと思う。
怒鳴るかも知れない。
徹夜もあるかも知れない。
責任感を持てる人じゃないと、一緒にやってはいけない」
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