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「同級生だからと言って甘えがあるのは困る。
軽い気持ちで仕事を休まれても困る。
そしていい加減な仕事をされても困る」
学生時代の綾を知っている茂木は
綾が、適当に進級の為だけにやったデザインも知っているのだろう。
(やっぱ、ダメだよね)
綾は諦めにも似た気持ちで茂木の話に耳を傾ける。
もしかしたら、知り合いのよしみでとってくれるかも…なんて甘い期待は吹っ飛んでしまっていた。
しかし茂木から出た言葉は意外な物だった。
「それでも良いなら、と言うか…厳しくても着いて来てくれるなら
試しに3ヶ月やってみる?」
知り合いだから
同級生だから
茂木の言葉にそんな馴れ合いの感じはない。
雇い主として
ただ自分の望む仕事をしてくれるのか
それを3ヶ月で見極めてくれようとしているのだろう。
今はただガムシャラに頑張るしかない。
せっかくのチャンスなんだから。
「はい!
やらせてください」
綾は、真っ直ぐ茂木の瞳を見て答えた。
厳しい顔をしていた茂木の顔が緩む。
優しい笑顔。
「じゃ、さっそくいつから来れる?」
こうして綾の新しい生活は始まった。
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