美しいもの

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仕事はと言えば、初めは勝手がわからず 久々に触るパソコンに戸惑い いつも簡単なミスをしては、茂木を怒らせたり、ため息をつかせていた綾だったが やっと仕事にも慣れ 最近は怒鳴られる事も少なくなった。 かといって、まだまだ役立たずな事の方が多く 疲れた顔で画面を睨む茂木に、コーヒーを入れてやる事しか出来ない自分が申し訳なかった。 茂木の仕事は、新しいお店やカフェなどのトータルプロデュースが殆どで その店に合わせて、壁の色から照明の色まで、全てをコーディネートする。 茂木に連れられて、何度か茂木の手がけた店に行ったけれど 不思議と茂木の作り出す空間は、居心地が良くて いつも、あの事務所に使っている古い民家にいるような気分になるのだ。 色も形も 置いてある物さえ何一つ同じものはないのに なぜか落ち着く。 そして、それを証明するように、茂木の手がけた店は必ず繁盛するんだと そんな伝説みたいな話を、クライアントに教えられたりもした。
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