37人が本棚に入れています
本棚に追加
「さてと…」
おおかた引越しの荷物が片付いた小さな部屋で、綾は呟いた。
両親は、田舎に戻ってきたら?としきりに進めたが
このご時世、あんな田舎町に、仕事があるなんて思えない。
とは言っても、25歳で結婚してから
ぬくぬくと専業主婦をしてきた自分に、何か出来る仕事があるんだろうか。
もともと彼の借金で、ほんの少ししか貰えなかった慰謝料は、新しい部屋の契約と、引越しで、ますます少なくなってしまった。
「早く仕事探さなきゃ…」
綾は、独り言のように呟いて
別れた彼との写真が詰まった、今だ開けられない段ボールを、そのままクローゼットの中に押し込めた。
最初のコメントを投稿しよう!