第一章

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 校舎から出て何歩か進んだ所で振り返る。  初夏の少し蒸し暑い空気と新緑の葉を纏った枝の奥、色褪せた木造の壁面が、周りの景色に沈むように静かに佇んでいた。  どうやらここは森の中にぽつんと取り残されている場所のようで、舗装された道に出るまで俺は今にも消えそうな獣道を頼りに、延々と歩くしかなかった。  森から出た所はのどかな田園風景が広がる田舎だった。  そこから暫く適当に彷徨って、途中で見つけた国道を人気の多そうな場所に向かって歩いていると、正面から歩いて来た少年が声を掛けてきた。 「凜? やっぱり凜だ!」 「すっげぇ久しぶり!」
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